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おっさんアラサー女の欲まみれの戯言集

見た目はキラキラ女子、中身はおっさんのアラサー女のゆきびっちがアート以外のことを語るサブブログになります。

アラサー女が京都の町家ホテル【懐古庵】で幼い自分を見つけた話

私は古い建物が好きだ。
初めての記憶は当時住んでいたドイツ。

古い建物が立ち並び、でこぼこの石畳が敷き詰められ、教会が鳴らす鐘の音が定刻を呼びかける。
そんな町で私は幼少期育ったからか、ぴかぴかのLED電光よりも、少し曇ったガス灯のほうが好きなのだ。

 

30歳の誕生日目前、友人にとある提案を持ち掛けられた。

「京都の町家に泊まらない?」
二つ返事で快諾した。

実はこのとき町家と長屋を取り違えており、実際に町家と対峙したときには首をかしげたものだ。
しかし、それでも京都・左京区にある古民家に魅せられたため、そちらを紹介したい。

 

【目に映るもの全てが新鮮な町家ホテル】

最後に京都に訪れたときは、大学の課外授業、その前は中学の修学旅行だ。
セーラー服にコンバースを履き、女子で徒党を組んで闊歩した街並み。

今回も隣には、当時から私を温かく、時に冷たく見守り続けてくれている親友が横にいる。

 

懐古庵があるのは、京都駅から祇園を抜け、鴨川を渡った左京区、三条の近く。
大人の乗り物・タクシーで到着した懐古庵の玄関口で、信楽焼きのたぬきが出迎えてくれた。

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そこから徒歩3分ほど、住宅街の間を縫ってたどり着いた、今回のお宿。

 

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ドアにかかるは、ダイヤルロック式の南京錠と、内側のひっかけ棒
カードキーによる施錠に慣れてしまった私たちに新鮮な二つだ。

電子ロックなんてなくても、金属の噛み合わせだけで、簡単に外の世界をシャットアウトできるのだ。

 

中に入ると、そこには土間式の台所がまず目に入る。
資料館くらいでしか見たことがなかった、土間に足を踏み入れたときの感動たるや。

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テンション上がりすぎて入り口に頭をぶつける私と、それを奥で冷静に見守る親友。

どうやら食材を買ってくれば、ここでも料理ができるようで、食器も調理具も完備している。

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台所横には、露天風呂。そう、ほぼ外である。なんて贅沢なつくりだ。
保温性よりは、熱伝導性の高い鉄窯の五右衛門風呂。

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入るときは80度くらいの熱湯を蛇口からひねれば、外気温(当時は1月中旬)で冷えきった鉄釜で冷まされ、通常の温度になるという。

 

そして中には風呂場と絶対的に相性が良くない、水彩画が飾られている。

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確実に絵具が額に染み出ている。

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夜に入ると、鮭をくわえた熊の彫像や、またもや信楽焼きのたぬき、そして親友が見つけられなかった幻の蛙の置物からの熱視線を感じられる。

 

土間を上がると8帖の畳部屋が奥に並び、色の変わった桐たんすや、ちゃぶ台などが所狭しに並ぶ。

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更に奥の障子戸を開けば中庭があり、外側に個室トイレ(和式)が完備。

ひとまず親友に、怖いだの寒いだのと駄々こねるお約束芸を披露してみたものの、
真冬に飛ぶ虫はおらず、灯りも煌々と輝いており、大人の意地を見せるしかなかった。

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【忘れていたあの頃の私を呼び起こしてくれる2階】

手前の畳部屋の横には、ジブリ映画「トトロ」に出てくるような隠し階段がある。

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そこを上ると、明治・大正時代の家具や調度品が飾られた娯楽スペースになっており、「世界の車窓から」のVHS版を鑑賞したり、囲碁で遊んだりすることもできる。

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天井の梁を活かした山小屋風の部屋。
飾られている品々を眺めていると、幼い頃に訪れた祖父母の家を思い出す。

 

触れてはいけないと注意された、棚や壁に並ぶ古き良き時代の絵画やボトルシップ、古本など。言いつけを守り、ぎゅっと自分の手を抑え、必死に目を動かし、見つめていたものだ。

 

30歳になった今も、母の言葉を守り、京都の町家の二階の宝物たちに触れられないでいる自分の中に、あの頃の時間を見つけた。

 

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町家とは、江戸末期から戦前に建てられた木造家屋のことで、京都では行政市民一体となって保存活動が進んでいるという。

 

今回泊まった懐古庵では、町家のつくりだけでなく、室内の空気感も味わうことで、自分に刻まれた日本人のDNAを思い出すことができた。

 

 

安っぽい文になるが、やはりこう思う。

時を重ねるごとに新しい技術が生まれ、情報は濁流化している。
歴史ある町に「変わるな」「そのままでいてほしい」と言い続けて強要するのは酷な話だろう。

しかし、それでも守り続けているものに関して、外の人間ができることは、その土地の人々に感謝して利用し、その良さを他の人に伝えていくことだと思う。

 

できれば私もその一端を担いたい。

 

注)今回宿泊した部屋(建物)は、福寿庵になります。詳しくは下記HPをご覧くださいませ。

kaikoan.jp